(毎月発行の『連絡紙』より)


●平成29年7月号

 高校野球三重県大会1次予選で0対91という試合があった。3月27日の事だ。以下は記事の抜粋だ
.  負けたのは英心高校で、62被安打17失策で5回裏を待たずにコールド負けだった。 
過去に例のない大敗だが「選手はダメじゃない」と英心高校監督はツイッターに投稿した。
  監督はツイッターで野球部の練習や試合の模様を時には写真・動画つきで伝え続けている人であるらしい。その中で、「英心高校野球部に入って欲しい」人物として「野球と人生、どっちも真面目に考える人」などの5項目を訴えている。野球を通じて生徒に何かを学んでもらおうと投稿し続けていると言えるようだ。
  この高校は、もともと不登校の子どもを多く受け入れる学校だったという。休み時間にキャッチボールをする生徒がいて、野球部を2年前に創設した。最初の試合は、0対26で敗れた。部員は高校野球の厳しさを知り、負けん気が出て野球にのめり込んでいった。と監督は振り返っていう。
  更に「不登校だった子が、ただ学校に来るようになるだけではダメだと思う」と言い「心がしっかりと育ってほしい。自分の将来に前向きになり、人間性が形成されていってほしい」と監督は仰っている。
  是と同じ、いやこれ以上の事が高校野球ではあって、それが小学校の道徳の教科書に載っているという。…青森県深浦高校が0対122で負けた事だ。この話も過去に本紙コラムで紹介した。
  話を英心高校に戻す。
  試合途中で打球がピッチャーの腹に直撃し、立ち上がれなくなった。監督の「交代」に対して、ピッチャーは「最後まで投げさせてください」と食い下がった。その思いに負けて監督は続投させる事にした。
  続投させると、宇治山田商のベンチが立ち上がり、エースに拍手を送った。この投手は中学まで不登校だった、という。
「点差がついて30点取られても『1点ずつ取り返そう』と言い続け、誰も諦めませんでした」
と監督は話す。翌日の練習には部員全員が参加した、という。
  0対91で敗れた今回の試合だが、悔しくて何人も泣いたという。20〜30点も差がつくと、多くの対戦チームは試合を終わらせる為にバントアウトを行うという。だが今回の相手はフルメンバーで最後の最後まで攻撃の手を緩めなかった。さすが宇治山田商は県屈指の強豪である。
  今までの『終わらせてもらっていた試合』と違い、はっきりとした91点差だった。真剣勝負でボロ負けであったが、初めてチームとして認められた試合だった。0対91が現実の自分達の実力という証明を初めて貰えたのだった。
  …現実を見せつけられる事を本人もその周りも望まない。でも結局は現実こそが一番正しい姿なのだ。どの様にも言い訳が大人はできる。屁理屈の言い訳をして、周りからあざけり笑われても面と向かって笑われなければ良し…で人生ゲームアウト。
  初めから上手な人はいない。初めは失敗ばかりが続く。やらねば失敗は生まれないし、失敗しなければ痛みと出会えず、真摯な態度とも出会えない。失敗の経験を省略せずに踏んで行く…真摯に向かうとはそういう事だ。真摯であれば、周りもその下手さを受け入れてくれる。真摯であれば、下手でも問題の根本と戦っている愉しさを自分が感じられる。
  経験値の多さが自分を開く。だが、経験は真摯さがなければ成り立たない・上手くなりたくて努力する事で生きる事を学んでしまう…それこそが一番なのだ。
  若いと経験が少なくて痛みを色々な所に感じる。だが痛みを感じるから彼らのように前に出る力も大きい。真摯でありさえすれば良いのだ。色々と痛みに出遭って慣れて行き、心が動かなくなる。その分だけ現実をクリアできている…。
 だが現代は痛みに慣れていない高齢者も多い。痛みを躱して来たからだ。それを幸せに思って来た…。




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